AWS Backupは、Amazon Web Services(AWS)上のデータ保護を、一元的に管理できるフルマネージドサービスです。ここでは、AWS Backupの主な機能やメリット・デメリットを整理し、導入手順や注意点を実務目線で解説していきます。
AWS Backupとは

出典:AWS, Black Belt Online Seminar「AWS Backup で考える DR 戦略」, AWS Backup における DR 戦略の位置付け, https://pages.awscloud.com/rs/112-TZM-766/images/AWS-Black-Belt_2025_AWS-Backup-DR-Strategy-Basic_0430_v1.pdf
(2025年12月23日参照)
AWS Backupは、データ保護を低コストかつ安全に一元管理できるフルマネージドサービスです。
AWS上のサービスや、それ以外の環境も含めたバックアップ運用を、一ヶ所でまとめて自動化します。
あらかじめ設定したルールに従って動作するため、運用コストや管理工数を抑えつつ、ランサムウェア対策や監査対応にも対応可能です。
データ量が膨大になっても、システム全体をシンプルかつ確実に保護できます。
AWSに備わるバックアップ機能との違い
AWSでバックアップを取得する方法は主に3つありますが、全リソースを横断して一元管理できるのはAWS Backupだけです。
手動やサービスごとの個別機能と比べて何が違うのかを整理しました。
| 比較項目 | 手動スナップショット | サービス固有機能 | AWS Backup |
|---|---|---|---|
| バックアップの自動化 | ✕ | △ | ◯ |
| 管理のしやすさ | ✕ 台数が増えると管理が 煩雑化 | △ サービスごとに管理が分散 | ◯ 一元管理可 |
| 監査・ログ | 手動記録が必要 | 個別確認が必要 | 一括出力・分析可 |
| 主な課題 | 取り忘れ操作ミス | 管理が分散し全体像が把握しにくい | 小規模には機能過多 |
| 推奨シーン | メンテナンス前の 一時的な保存 | 特定サービスのみの 小規模利用 | 中〜大規模システム 全社運用・監査対応 |
これらのバックアップは、管理の統合レベルが異なります。
手動スナップショットやサービス固有機能は、用途や規模によっては有効ですが、管理が分散しやすく、全体最適の観点では運用負荷や統制上の課題が残ります。
AWS Backupは、バックアップ運用をサービス横断で統合し、企業としての共通ルール(ポリシー)を全リソースに適用できる点が特長です。運用の属人化を防ぎ、監査やセキュリティ要件にも対応しやすい管理基盤を実現できます。
AWS Backupの役割
AWS Backupの役割は、組織全体のデータ保護を統括するオーケストレーター(運用の司令塔)です。
EC2やRDSといった各サービスが独自に備えるバックアップ機能を個別に操作する必要がなく、全体に対して統一ルールを指示し、管理する上位レイヤーとして位置づけられます。
| AWS Backupの主な機能 | |
|---|---|
| 特徴 | 具体的な役割 |
| 一元管理 | EC2やRDS、S3など、異なるサービスや環境のバックアップをひとつの画面で統合管理します。 |
| 自動化 | 「毎日深夜に取得」などの統一ポリシーを定義し、全リソースに対して自動実行を指示します。 |
| コンプライアンス | ルール通りに保護されているかを監視し、監査レポートを自動生成して証明します。 |
| データ保護 | データの書き換えや削除を禁止する機能(ボールトロック)により、ランサムウェアから保護します。 |
AWS Backupは、ガバナンス(統制)を効かせるための仕組みです。
管理を一本化することでコストを削減するとともに、バックアップ取得状況を可視化・証跡として残すことが可能になります。そのためランサムウェア被害への備えに加え、監査不備といったリスクの低減に寄与します。
AWS Backupの構成要素

AWS Backupのアーキテクチャは、次の3つの要素で構成されます。
これらは相互に連携して機能しています。最初に保存場所のバックアップボールトを用意し、実行ルールであるバックアッププランをひもづけます。
この設定により生成された復旧ポイントが指定先のバックアップボールトに自動的に格納・管理される仕組みです。
1.バックアップボールト
バックアップボールトは、バックアップデータを保管する場所です。ただ置いておくだけの領域ではなく、重要なデータを守るための仕組みが備わっています。
たとえば、本番環境用や開発環境用というように用途ごとに分けて管理できます。さらに、バックアップボールトごとの暗号化や操作者の制限も可能です。
こうした仕組みにより、外部からの攻撃や、社内での操作ミスからもデータを安全に保護できます。
2.バックアッププラン
バックアッププランは、バックアップ業務を自動化するための共通ルール(指示書)です。
具体的には以下の3点を定義して、対象のサーバーやデータベースに適用します。
- スケジュール:いつ、どの頻度で取るか
- ライフサイクル:いつまで保存して削除するか
- リソース:どの機器を対象にするか
これを作れば、あとはAWS Backupがルールに従って複数の機器をまとめて管理し、バックアップを実行します。
3.復旧ポイント
復旧ポイントとは、データをどの時点の状態に戻すかを指定するためのバックアップデータを指します。
AWS Backupでは、EBSのスナップショットなど、サービスごとに形式の異なるバックアップが作成されます。これらを復元に使う単位としてまとめて呼んでいるのが、復旧ポイントです。
復旧ポイントは、指定したバックアップボールトに保存されます。復元時は、一覧から復旧ポイントを選択することで、その時点の状態に戻せます。
AWS Backupがサポートする主なAWSサービス
AWS Backupは、コンピューティングやストレージ、データベースなど、多岐にわたるAWSサービスがあります。
現場で利用されることが多いサービス(*1)は、以下のとおりです。
- Amazon EC2
- Amazon RDS
- Amazon Aurora
- Amazon S3
Amazon EBSは主にEC2にアタッチして利用されるブロックストレージであり、Amazon EFSは複数のリソースから共有可能なマネージド型ファイルストレージです。
いずれもサービスの特性や管理単位が異なるため、バックアップを各サービスの機能に任せた場合、設定や管理が分散しやすくなります。
AWS Backupを利用すれば、EBSやEFSを含む複数のストレージサービスに対して、共通のバックアップポリシーを適用し、取得状況や保持期間を一元的に管理できます。
ただし、Amazon S3のバックアップには前提条件があります。
AWS BackupでAmazon S3をバックアップする場合、S3のバージョニング機能を利用して
オブジェクトの各バージョンを復旧ポイントとして管理します。そのため、事前にS3バケットでバージョニングを有効にしておく必要があります。
なお、バージョニング自体の有効化や、オブジェクト単位のライフサイクル設定、
リアルタイムレプリケーションといったS3固有の機能は、AWS Backupでは設定できないため、S3側で個別に管理します。
Amazon S3については以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:Amazon S3とは?導入メリット・デメリットやCLIの使い方を解説
*1 2025年12月時点。最新の対応サービスはこちらを確認してください。
出典:サポートされている AWS リソースとアプリケーション AWS Backup デベロッパーガイド , https://docs.aws.amazon.com/ja_jp/aws-backup/latest/devguide/whatisbackup.html,
(2025年12月30日参照)
AWS Backupの3つのメリット
AWS Backupの導入による主なメリットは以下の3つです。
これらの機能は、バックアップ業務の負荷とリスクを低減します。
1.バックアップ作業を自動化できる
AWS Backupでは、取得頻度や保持期間を「バックアッププラン」として定義することで、バックアップを自動化できます。
そのため、運用担当者が手動でスナップショットを取得する作業は不要になります。
手動運用を排除することで、取得漏れや操作ミスといったリスクを抑えられ、管理工数を削減しつつ、継続的で安定したバックアップ運用が可能です。
2.複数サービスをまとめて管理できる
AWS Backupは、複数のAWSサービスにまたがるバックアップ運用をまとめて管理できます。
EC2やRDS、EFSなど、対象となるサービスが増えるほど、バックアップ設定や実行状況の把握は煩雑になります。AWS Backupを利用すれば、これらの設定や実行結果を単一のコンソール上で管理が可能です。各サービスの管理画面を個別に確認する必要はありません。
また、ダッシュボードでは、バックアップの成否やエラー状況を一覧で確認できます。実行結果の一覧性が確保できるため、運用ルールを統一しやすくなり、異常の早期把握にもつながります。
一方で、このメリットは複数のサービスやリソースを管理する環境で発揮されます。EC2が1台のみ、あるいはS3のみといった単一リソースの構成では、一元管理による効果は限定的です。
3.誤削除や障害リスクに備えられる
AWS Backupは、データ消失のリスクに備える仕組みがあります。定期的にバックアップを取得することで、誤操作やシステム障害が発生した場合でも、データを復元できる状態を保てます。
また、リージョン間コピーやアカウント間バックアップを活用することで、大規模災害やアカウント侵害といった事態が発生した場合でも、別のリージョンやアカウントに保管されたバックアップから復旧できる体制を構築できます。これにより、特定のリージョンやアカウントに依存しない構成を実現できる特徴があります。
このように、復元可能な状態を継続的に維持することは、BCP(事業継続計画)や監査要件への対応にもつながります。
AWS Backupの注意点
AWS Backupの導入にあたって、主な注意点は以下の通りです。
安定して運用するには、これらの特性を理解したうえで、あらかじめ対応を考えておく必要があります。
コスト管理の難易度が高い
AWS Backup の料金は、バックアップストレージの使用量やリージョン間コピー時の転送量、リストア量などに基づいて課金されます。
AWS Backup 自体はサービス横断的に統一された料金体系ではありますが、バックアップ対象となる各リソースの特性やデータ量の違いによって、最終的な費用構造が異なるように見える点は注意が必要です。
たとえば、EBS や RDS、EFS、S3 では、バックアップ対象データの容量や利用パターンがそれぞれ異なるため、同じバックアップストレージ量でも請求額が変わる可能性があります。
このため、システム全体のバックアップ費用を一律に見積もることは容易ではありません。
予算を管理する際は、各サービスの課金仕様と転送コストを整理したうえで、事前に試算しておくことが重要です。
復旧手順が複雑になりやすい
AWS Backupの復旧手順が複雑になりやすい理由は、復元時に既存リソースを上書きするのではなく、新しいリソースが作成されるからです。
したがって、復元後はネットワークやセキュリティ設定、DNSやロードバランサーの接続先などを手動で調整する必要があります。復旧完了後には不要となった旧リソースの削除対応を行わなければ、不要なコストも発生し続けてしまいます。
また、復元操作にはバックアップ取得時とは別のIAM権限が必要です。
このように、AWS Backupはバックアップ運用を一元管理できる一方で、復元時の個別作業が見えにくくなる傾向があります。事前に復元テストを実施し、手順を整理しておきましょう。
専門知識を持つ人材に依存しやすい
AWS Backupを安全に運用し、障害時に復旧するには、AWSの知識を持つエンジニアが必要です。
具体的には、IAM(権限管理)の設計や、VSS(Volume Shadow Copy Service)などアプリケーション整合性の仕組みへの理解が求められます。あわせて、KMS(暗号化)に関するトラブル対応や、エラーログをもとに原因を切り分けるスキルも欠かせません。
これらの知識や経験が不足している場合、障害対応が滞り、復旧に時間を要する可能性があります。
AWS Backupの設定手順

AWS Backupの設定手順は、データの保存先を定義してから、バックアッププラン(ルール)を作成したうえで、対象となるリソースを割り当てます。
手順を順番に解説します。
1.バックアップボールトの設定
まずは、バックアップデータの保管場所となるバックアップボールトを作成します。ボールトはすべてのバックアップデータを格納する基盤となるため、アクセス権限の設計を含めて慎重に設定しましょう。

AWS Backup コンソールの「ボールト」画面から「新しいボールトを作成」をクリックします。

表示された画面で次の内容を設定します。
- ボールト名を入力
- ボールトタイプを選択(通常はバックアップボールト)
- 暗号化キーを確認または選択
- 必要に応じてタグを追加
バックアップボールトはバックアップデータの中核保管先となるため、IAMによるアクセス制御は慎重に設計することが重要です。また、WORM(ボールトロック)機能を利用することで、保持期間中のデータ削除や変更を防止できます。
運用面では、本番環境用と検証環境用でボールトを分けて作成しておくと、用途ごとのアクセス制御が可能になり、誤操作による影響範囲を限定できます。
2.バックアッププランの作成
バックアッププランでは、取得頻度や実行時間、保持期間などのルールを定義します。これによりバックアップ運用の方針が決まります。
以下の項目に沿って順に設定していきましょう
それぞれ詳しく解説していきます。
STEP1:起動オプションを選択
まず、起動オプションで作成方法を選択します。

初めて設定する場合は「テンプレートから開始」を選ぶと基本設定を押さえやすく、バックアッププラン名を入力して進めます。
STEP2:バックアップルールを追加
次にバックアップルールを追加します。

ルール名を入力し、保存先となるバックアップボールトを選択してから、バックアップの取得頻度(毎日・毎週など)を設定します。頻度は業務要件や復旧目標を踏まえて決定しましょう。
STEP3:バックアップの実行時間を設定
バックアップの開始時刻と実行可能時間を設定します。

指定時間内に完了しない場合、バックアップが失敗扱いになることがあるため注意してください。特に初回はフルバックアップとなるため余裕を持った設定が重要です。
システム負荷を考慮し、業務時間外に設定するケースが多く見られます。
STEP4:ポイントインタイムリカバリを設定(任意)
必要に応じて継続バックアップを有効化しましょう。

細かな時点への復旧が可能になりますが、ストレージ消費が増加するため用途に応じて判断します。
STEP5:ライフサイクルを設定
ライフサイクルの設定では、コールドストレージへの移行日数や保持期間を指定します。

ライフサイクルの設定は、長期保存コストを抑えたい場合に有効です。保持期間は監査要件やBCPを考慮して決定します。短すぎると復旧範囲が制限され、長すぎるとコスト増加につながります。
STEP6:オプション設定
バックアップインデックスを有効化すると復旧時の検索性が向上します。

スキャンモードは通常デフォルト設定のままで問題ありません。災害対策としてコピー設定で別リージョンへの複製を指定できます。さらに復旧ポイントタグを設定することで、運用時の識別や管理効率の向上につながります。
3.対象リソースの指定

バックアッププランに保護対象となるリソースを割り当てましょう。
それぞれ詳しく解説していきます。
STEP1:リソース割り当て名を入力
まずは、識別しやすい名称を入力します。対象用途がわかる名前にしておくと管理が容易になります。
STEP2:IAMロールを確認
次にIAMロールを選択しましょう。これはAWS Backup がバックアップ処理に使用する権限です。通常はデフォルト設定のままで問題ありません。
STEP3:バックアップ対象の範囲を選択
IAMロールを選んだら、バックアップ対象のリソースを指定します。
- すべてのリソースタイプを含める
- 特定のリソースタイプを含める
「すべてのリソースタイプを含める」を選択した場合、アカウント内のバックアップ対応リソースが一括で対象となります。設定は容易ですが、意図しないリソースまでバックアップ対象に含まれる可能性があります。
一方、「特定のリソースタイプを含める」では、EC2やRDSなど対象範囲を限定した指定が可能です。管理工数は増加しますが、バックアップ範囲を適切に制御できます。
STEP4:バックアップ対象の範囲を選択
最後に、必要に応じてタグを用いてバックアップ対象を絞り込みましょう。
タグ条件を設定すると、指定したタグを持つリソースのみがバックアップ対象になります。タグ条件の設定では、環境(例:本番・検証)や用途単位で対象範囲の管理が可能です。
タグ指定を利用すると、新規リソースに同じタグを付与するだけでバックアップ対象へ自動的に含めることができ、設定漏れの防止につながります。
内容を確認したら、「リソースを割り当てる」をクリックして設定を確定します。
4. 復旧方法の確認
復旧時の操作内容は、対象となるサービスによって変わります。
例えば、EC2とRDSでは操作が異なるため、最低1回のテスト実行が必要です。バックアップ設定が完了したことで安心し、実際の復元テストを一度も実施していないケースは少なくありません。
| 障害発生時のよくある失敗例 |
|---|
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上記のような理由から、復旧作業が滞ってしまう場合があります。バックアップは「取得できていること」ではなく、「確実に復元できること」ではじめて意味を持ちます。
最低でも四半期に1回程度の復元テストを実施し、サービスごとの復旧手順を手順書として整理しておくことが重要です。
また、リストアを実行すると、データは「新規リソース」として作成されます。既存サーバーへの上書きにならないため、復旧後にはIPアドレスやセキュリティグループなどの設定を確認しましょう。
AWS Backupを成功させるなら専門家を頼ろう
AWS Backupは、複数のAWSサービスに分散したバックアップ運用を一元化し、自動化や統制を実現できる仕組みです。
運用工数の削減や、誤削除・障害への備えとして有効である一方で、コスト管理や復旧手順の整理、必要な専門知識の把握といった点には注意が必要です。
これらを十分に整理しないまま導入すると、費用の見通しが立ちにくくなったり、障害発生時に復旧対応が滞ったりする可能性があります。
AWS Backupを有効に活用するためには、仕様を正しく理解したうえで、設計段階から運用・復旧までを見据えた準備が重要です。
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